いつもの午後、いつもの風景




穏やかな昼下がり。


久しぶりに眞魔国に帰ってきたオレ、グリエ・ヨザックは、血盟城の敷地内でも一番の昼寝スポットに来ていた。
グウェンダル閣下への報告も終わり、次の任務まで時間が空く、ということなので、疲れた体を休めるために昼寝でもしよう、と思ったのだ。

いつもの木の所に行き、横になる。
目を閉じ、一度、深く呼吸すると、人が近寄る気配がした。

そう、この気配は……

「あれ?ヨザックじゃんか!!」
「どぉも〜。久しぶりネ、坊ちゃんv」

体を起こし、挨拶をする。

「いつ帰ってきたんだよ〜?」

オレの隣りに腰を下ろす陛下。

「ついさっきですよ。陛下はどうしたんです?」

「あー…俺は、ちょっと……」

言葉を濁す様子を見て、理由が思い浮かぶ。

「ギュンター閣下の授業、サボったんですかぁ?」
「う゛っ…;」

やっぱりだ。顔に『図星』と書いてある。

「ヨザック〜、頼む!俺がここにいること、みんなには内緒にしといてくれ〜;」
「…しょうがないですねぇ。今回だけですよ?」
「ありがとう!!」
「そのかわり」

急に真面目な顔と声を作る。

「…その代わり?」
「オレと一緒に昼寝してくれません?」
「なんだ、そんなことか…いいよ!!」

もっととんでもないお願いをされると思っていたのか、陛下はホッと息をついた。

「俺はまた、女装でもさせられるのかと思っちゃったよ〜」

オレの横に寝転がってから、陛下が苦笑気味に話してきた。


……しまった。その手もあったか……


まあいい。
久しぶりの休み、自分の想い人と2人、昼寝をするのも悪くない。
そう思い、再び寝る体制になった時だった。


………殺気!!?


それは、陛下ではなく、確実にオレに向けられているものだった。
相手の見当はついている。
過去、何度も感じたことがある。
常にそばで…

「…ここにいらっしゃったんですか、陛下?」
「あ…コンラッド!陛下って呼ぶなよ、名付け親」
「そうでした」

目の前では、ほのぼのした日常の一コマが繰り広げられている。
が。
オレに向けられている殺気は、尋常ではない。

「隊長ぉー、任務から帰ったばっかりで疲れてるオレに対しての労いの言葉は無しですかぁ?」

2人の雰囲気を壊すように、声をかける。

「ああ、ヨザ。帰ってたのか?」

うさんくさい笑みを浮かべた彼は、白々しく言い放つ。

「えぇ、最初からずーーっといましたよ?ところで…邪魔しないでくれません?オレ、今から陛下と昼寝するんですよ」

コンラッドの眉が、一瞬だけ動く。
ざまぁみろ。と心の中で毒づいた。

「そうなんですか?ユーリ」
「そうだよ?」

裏で起きている攻防など、まったく気付いていない陛下は、呑気に答える。

「そう…ですか…」

声に残念さが混ざっているコンラッド(絶対わざとだ)。


さぁ、これで邪魔者はいなくなった。


…そう思ったオレが甘かった。

「あ、そうだ!コンラッドも一緒に寝ればいいじゃん!!」
『え!!?』

一方は苦さを、一方は喜びを含ませた声が重なる。
きっと陛下のことだから、自分が背後の攻防の原因になっているなんて、全く気付いていないのだろう。
陛下らしいといえば、そうなのだが……

オレが頭の中でうんうん唸っているうちに、コンラッドは「では失礼します」なんて言って、陛下の隣りーオレの反対側に寝転んだ。

……まあいい。今回のところは、引き分けということにしておこう。


早々と陛下の寝息が聞こえる中、オレも眠気に意識を預けることにした。


〜fin〜











鳳凰せつあ様よりキリリクしたものを頂いてきました!
忙しいのにほんとありがとうv
8000打おめでとっ!!!これからも応援してまっすvv


06.03.04